|
時計作りにおいて、かつて世界の中心はロンドンでした。17世紀から18世紀の大航海時代。
当時のイギリスは洋上で船舶の正確な位置を知るために必要な時計製造技術に磨きをかけ、
やがて世界最強の海洋国家へと変わるとともに近代時計産業の礎も確立しました。まさにその時代。
大英帝国時計界の重鎮として多大な功績を果たしたのが、ジョセフ&トーマス ウィンドミルズ親子なのです。
父・ジョセフは時計師として指導者的存在となり、国王の勅命によって設立された時計師ギルドであり、
教育機関でもあった「ワーシップフル カンパニー オブ クロックメーカーズ」(1631年設立)の理事長に
選出されました。また、その後任となったのは「シリンダー脱進機」を考案し、グラハムの創始者となる
ジョージ・グラハムが師事したことで有名なトーマス・トンピオンです。彼らの作品はヨーロッパの名家を飾り、
今日もなお、世界中の公私双方のコレクションの基本アイテムとなっています。
父・ジョセフの死後、息子のトーマスは、家業を引き継ぎこの時代のクロックメーカーのなかで最大の成功を
収める事業へと発展させました。それを支えた一つの要因は、ロンドン塔および、当時、軍事施設があった
ウールウィッチの街における、女王陛下の命による30年のメンテナンス契約、並びに英国王室御用達としての
受注の獲得でした。
ファミリービジネスだった時計ブランドを、英国最大、当時の世界最高峰の座へと上り詰め、その名を天下に
轟かせたトーマスは、その後1737年に亡くなります。
彼は生涯独身で後継者もいなかったことから、親子で築き上げてきた壮大な歴史に終焉を迎えることとなるのです。
|
|